幻想即興日記「3がつ3にち-Stranger Than Paradise-」
今週のお題「雛祭り」
今日、パパンが死んだ。
火葬場にて
「火葬のオプションですけど、素焼き、塩焼き、テリヤキの中から選べますので、好きなのをお選びください」
「テリヤキってのはなんなんです?」
「テリヤキって言うのはしょうゆベースのあまじょっぱいタレを塗ってええ感じに焼いたやつの事です」
「さいでっか、ええ感じやなぁ。どうしよかなぁ。初めての事でようわからんのですわ」
「塩焼きも結構お勧めですよ。言い忘れてましたけど、塩焼き言うても普通の塩焼きと、スパイシーソルト、ソルト&ペッパーの三種類からまた選べるんですわ。スパイシーソルトっちゅうのは5種類のスパイスと岩塩をミックスしたちょっと洒落た塩の事で、ソルト&ペッパーっちゅうのは塩こしょうの事ですわ」
「スパイシーソルトってのも洒落てますなあ。しかしまあ、テリヤキにしますわ」
「かしこまりました。焼き加減は衛生的観点からウェルダンしか選べませんのでご了承ください」
「衛生的観点ですか」
「そうなんです。人間って汚いんですよ」
「そうですね。人間は汚いです」
俺はパパンのテリヤキを食べた。そう言えば昔、マクドでこんな味食べたなぁ、と思った。
弔辞
ワタスのパパンは立派なパパンでした。それはそれは超人的っていうか、プリミティブかつコンサバティブで、守ってくれそうな雰囲気が背中から滲み出てたって言うか、草野球の5番バッター、そんな感じでした。
パパンはワタスに沢山のものをくれました。中でも最も大切にしているのはアルバニア土産にくれたどえらいかわいいクマのぬいぐるみです。そのクマのぬいぐるみはそれはそれはどえらい可愛くて、ワタスはクマと言えばそのどえらいかわいいクマのぬいぐるみしか知らないわけですから、三毛別羆事件とか言われましても、それは別の世界の話っていうか。こんなにどえらいかわいいクマちゃんが人を襲ったり食べたりするわけ無いじゃんって思ってしまうわけですよ。
同じように、ワタスは政治や法律に関してもそういうデフォルメされたどえらい正しい政治や法律のイメージを見せられて育ってきたので、政治家は偉い人、法律はワタスらを守ってくれるものと無条件で信じているんです。そんなの常識です。
真実なんて知りたくもないんです。ワタスはいつまでも子供のまま、どえらいかわいいクマちゃんと遊びながらどえらい正しい政治や法律に守られていたいんです。
かわいくなくて醜いだけの真実なんて知りたくもありません。
何か文句ありますか。
例えばソクラテスを学んでも、
「自分の中の疑問を大事にして納得いくまで探究し続けよう」と思う人もあれば、
「殺されたくないから大人しく周囲に合わせて生きよう」と思う人もいるでしょう。
人間はみんな自分がかわいいのです。
なんの話でしたっけ?
ワタス、なんかアホっぽいですか?
だって今日は3月3日ですからね。3の倍数と3のつく日はアホになるんです。そんなの常識です。